藤原のループのボールが効いた。相手の強打をしのぐだけでなく、リターンから藤原はループボールをまぜた。森田は、足を動かし、しっかりボールに入ることでこれに対応したが、常に100%のショットを放つことは難しかった。力んでミスしたり、コースが甘くなって逆襲を許したり……。ハードヒットを続ける森田の方が、むしろ我慢のテニスを強いられているようだった。
「(ループのボールに対し)ライジングで返したり、下がって打つこともできたが、今日は一貫して(ベースラインの)中に入っていって打った。ただ、そうするとリスクもあるし、ミスも出る」と森田も、このボールに苦しんだことを認める。藤原は、このループを駆使しつつ、縦横にコートを走り回った。そうしてカウンターショットの機会を待ち、相手のミスを誘った。
「自分のやるべきプレーを追い求めてきたが、それも大事だが今日は相手が嫌がるプレーをしようと思った。攻めるだけがプレッシャーの与え方ではないので……」と藤原。アグレッシブなプレーを指向する藤原が、森田対策として選んだ戦術だった。これには森田も「相手も自分の弱点を知っているというか、苦手なことをしてきた。残念だが、仕方がない」と、相手のクレバーさを認めるしかなかった。
「ケガから復帰して、徐々にランキングも上がってきたが、注目されている選手は他にもいるのでプレッシャーもない。ゲームとしての試合を楽しみたいと思ってプレーしている」と藤原。故障にも苦しめられ、全日本の8強入りは、準決勝に進んだ02年以来5年ぶりだ。「全日本で勝ち上がるのは最近あまりなかったので、毎日試合ができるのはうれしい」。フェド杯代表のチームメートを破り、01年の覇者が2度目の栄冠に向けて加速した。
森田は4年連続の全日本で初めて8強入りを逃した。それでも森田には、充実したシーズンを送ったという自負があるのだろう。「負けてしまったのは悔しいが、最後までベストを尽くすことはできた」と前を向いて話した。
広報委員・フリーライター 秋山 英宏