本当の試合が始まったのは、第2セット第6ゲームからだった。第1セットを落とし、第2セットも1−4とリードを許した奈良だが、このゲームは15−40から追い上げ、5度のデュースの末にサービスをキープする。次のゲームを落とし、2−5となったが、ここから3ゲーム連取で追いつき、決着はタイブレークへと持ち込まれた。
この日の奈良は、立ち上がりからショットの精度が低かった。積極的にダウンザラインに展開し、チャンスと見ればドライブボレーで攻めたが、それらのショットが少しずつラインを割った。「昨日の疲れが抜けていなかった」という奈良。体のキレが悪く、足の運びが悪い分、惜しいミスになった。波形のカウンターショットの鋭さだけが目立っていた。
ところが、第2セット後半は奈良の動きが尻上がりによくなり、ミスが減った。勝ちたいという執念が、最後に残ったエネルギーを燃焼させたのだろう。奈良が深いボールで左右に振り、波形がそれに対応する形が増える。ラリーは緊迫し、固唾をのむような展開が続いた。両選手の集中力が火花を散らした。
しかし、奈良のゾーン状態はタイブレークに入るまでだった。追いついたことで、現実に引き戻されたのか。奈良はサービスのタイミングを狂わせ、タイブレークは一方的な展開となった。
「ゲームを取られても集中力が切れなかった」と波形。完勝ペースから一転、冷や汗をかかされる展開となったが、動じる気配はなかった。準決勝進出は2年ぶり2度目。05年は米村知子に行く手を阻まれたが、その悔しさをもう一度味わうつもりはない。「勝ちたいです。コロシアムで決勝を経験したい」と言い切った。
「足が踏ん張れなかった分、(ダウンザラインを狙ったショットに)ズレがあった」と奈良。単複合わせて6試合目。疲労の積み重ねが、若い肉体から強さとしなやかさを奪ったのだろう。快進撃は止まったが、この全日本では大きな収穫もあったはず。「ショットの速さでもついていけたし、持ち味である展開力も通用する自信が持てた」。15歳のシンデレラガールは、そう言って目を輝かせた。
広報委員・フリーライター 秋山 英宏