藤原は、6年前に大会を制している。ケガから復帰、5年ぶりの初戦勝利から、森田あゆみ(キヤノン)、瀬間友里加(ピーチ・ジョン)という上位シードを下し、快進撃を続ける第15シード。いわば失うものはない。かたや中村は、決勝敗退2度、悲願の初優勝を目指す世界70位の第1シード。勝たねばならない。このプレッシャーの差がどう試合に出るか、注目の準決勝となった。
試合は10時スタート、ノースリーブのウエアを着た両者には少々厳しい寒さだ。それでも藤原は序盤から快調に飛ばす。積極的に緩急をつけ、逆をつき、要所でバックハンドの逆クロスが突き刺さる。中村は、今ひとつ動きが鈍い。時折カウンターで切り抜けるが、踏み込めないショットが目立つ。中村の球が浅いと藤原がラリーを支配、中村の球が深いと藤原がオーバーペースでミス、という展開が2セット続く。
ゲームスコアは拮抗、2ゲーム以上離れることのない展開から、第1セットはキープ合戦から第12ゲームを中村が、第2セットはブレーク合戦から第10ゲームを藤原が、相手のミスにつけ込み、それぞれ取った。このままでは勝負はわからない、中村危うし、と会場の多くの人が思ったことだろう。トイレットブレークも加わり、長いインターバルが入る。
ファイナルセット、藤原のテニスは大きくは変わらなかった。あえて言えばファーストサーブの入りが少し悪かったかもしれない。しかしこのセット、藤原の相手は、突然本来の姿を取り戻したワールドツアーの選手だった。ここまでの2セットがうそのような、中村の鋭い動き、球の深さ、サーブとフォアハンドの切れ、そしてウイナーの山。デュースもないまま、6−1で試合終了。このセットだけ見れば、JTA19位の選手は、WTA70位の敵ではなかった。
中村藍子選手コメント 「第1セットはどちらが取ってもおかしくなかった。第2セットは常にリードされる嫌な展開で落としたが、第3セットは気持ちを切り替えることができた。相手のプレーをもう一度見直してプレーできた。ボールも走り、このセットは本当にいいプレーができたと思う。一戦一戦、集中してプレーできているので、もう決勝なのかという感じ。ここ数年は、全日本のタイトルは絶対取りたいと思っていたが、今は全日本は通過点と思っている。相手を意識せず、自分のプレーができれば結果はついてくると思う。去年は先を見てプレーしていたが、今年はリラックスして一試合一試合できている。前とは違ったプレーができると思う」
フリーライター 倉沢 鉄也