全日本選手権が全米オープンと同時期に行われていたときがあった。その頃は、昼に全日本を見て、帰ってから全米オープンをテレビ観戦だったが、正直言ってきつかった。同じテニスでも、それはまるで別競技にしか思えなかったのだ。大会前に鈴木貴男(高木工業)がこんなことを言っていた。「初めて優勝した96年の試合をこの前、ビデオで見たけど、もう本当に下手。今の自分とやったら、10回やって1回勝てるかどうか…」。
今週は、全日本の取材から帰るとATPのマスターズカップをテレビ観戦しているが、世界トップ8の試合と全日本の試合に違和感を感じない。そう、この10年で、日本のテニス、全日本のレベルは明らかに高くなっているのだ。
女子シングルスの決勝は中村藍子(ニッケ)と波形純理(北日本物産)の対戦となった。2人の試合は00年のインターハイ以来だという。そのときは中村が6-3,6-3で勝っているが、そんな昔の記録なんて、それこそ関係ない! 本人たちが「やってみなければどんな試合になるかわからない」と口をそろえて言うのだから、そこが、まさにこの試合の見どころだ。
男子の準決勝は鈴木対松井俊英(ミキプルーン)、伊藤竜馬(三和ホームサービス)対權伍喜(ミキプルーン)の対戦となった。鈴木と松井は、今のテニス界では“希少種”となったサーブ&ボレーヤー。滅多に見られないサーブ&ボレーヤー同士の戦いをこの舞台で見ることができる。「ファンの記憶に残るような戦いをしたい」と語る鈴木。その思いは松井も同じだ。
ディフェンディングチャンピオンの岩渕聡(ルネサンス)を破った19歳の伊藤と、第2シードの添田豪(ミキプルーン)を破った權の試合も面白そうだ。岩渕戦の前から「いけると思っていた」という伊藤には大きな勢いがあるし、添田に「途中から何をやればいいのかわからなくなった」と言わせた權の変幻自在のプレーもマーベラス。伊藤は攻め切ることができるのか? それとも權がいなして伊藤のテニスを壊してしまうのか?
フリーライター 井山 夏生