サーブとネットプレーが武器の似たもの同士だが、声援を聞いていると観客は“貴男派”“松井派”に二分。時速200キロの高速サーブを土台に、相手との駆け引きも駆使しながらゲームを進める鈴木。一方の松井は、優れた身体能力を生かし、ダイナミックなサービスゲーム、リターンゲームを見せる。二人のサーブ&ボレーヤーは案外、対照的だ。その個性が際立つからこそ、それぞれの選手に“熱い”ファンがつくのだろう。
第1セットは互いにワンブレークで終盤へ。タイブレークを制したのは松井だった。しかし、第2セット以降はまったく展開が変わる。第2セットは鈴木の6−0。大きな変化は鈴木のリターンゲームにあった。序盤は「早いタイミングのリターンでプレッシャーをかける」ことを重視した鈴木だが、第2セットからチップ&チャージ中心に切り替えた。これが見事にはまった。このセット、松井は14本のファーストサービスのうち5本、5本のセカンドサービスのうち1本しかポイントに結びつけられなかった。第3セットも松井のファーストサービスでのポイント奪取率は50%。鈴木を上回る7本のエースを奪った松井だが、ブレークダウンは計6度を数えた。
前日の準々決勝は15本のエースを決めた鈴木だが、この日のエースは、たった2本。松井がすべてのボールに食らいついたとも言えるが、鈴木が派手な打ち合いより“実”を取ったと見るべきだろう。ファーストサービスでのポイント奪取率は82%。確実に“刻んでいった”鈴木が、着実にポイントを重ねていった。サーブとリターンの駆け引き、パスとボレーの駆け引きに大人の味を見せた鈴木の鮮やかな逆転勝ちだった。
広報委員・フリーライター 秋山 英宏